ジョアンとブライアン
何度もここで紹介した『パジャマを着た神様』にボサノバという音楽がブラジルの音楽界に与えた影響について書かれた章がある。
大雑把に言うとナイトクラブのお客さんを対象にした歌詞が多かったブラジル音楽を、海と明るい女の子というイメージに持って行ったのはボサノバだったという話が書かれている。
一方、太陽の下には出ないし(もちろん海には行かないし)、ショートパンツの姿を見たものがいない、というミュージシャンにも関わらず、皮肉にもブラジル最高峰のボサノバミュージシャンとなったのはジョアン・ジルベルトである、とも書かれている。
こんな話、どっかで聞いたことはないだろうか。
そう、ビーチボーイズのリーダー、作曲家、アレンジャーながら海に行かないし、サーフィンもしなかったブライアン・ウィルソンそっくりなのである。
風物詩としての音楽と現実。天才は現実なんて見ない。その現実離れした想像力はリスナーの目の前の光景を超えるのか。
どんな海岸をイメージして彼らはレコーディングしているのだろうか。もしかしたらそれは海辺ではなく、どこか遠い宇宙の世界かもしれない。