ナラとボサノバと日本人
またまた登場の『パジャマを着た神様』では、ナラ・レオンの晩年のことも書かれている。脳にできた腫瘍との戦いの中、彼女は死の直前まで様々な音楽活動を行っていたらしい。
最後のアルバムは日本のレコード会社からの依頼により録音された。アメリカのスタンダードの曲をボサノバのリズムで演奏し、ポルトガル語で歌うという内容だ。一見安易な企画に思えるこのアルバムのレコーディング風景を、この本では愛情溢れる文章で説明している。
アルバムタイトルは『いつか、どこかで』(ONDE E QUAND)。80年代的な音色の中、ナラは丁寧にひとこと、ひとこと、言葉をリズムの上にそお〜っと乗せるように歌う。初めはその歌声があまりにも透明で、消えてしまいそうに感じるのだが、聴き慣れるにつれ、その奥にある芯の太さに気がつく。
アルバム完成後、ナラは死を迎えることになり、予定していた日本公演は実現しなかった。
ジョアンのライブでも感じたのだが、日本人のボサノバ好きはブラジルのミュージシャンたちの活動をしっかりと支えている。結果的にナラの最後のアルバムを世に出すことができたのだから。おしゃれな雰囲気を味わうために聴くというのも悪くないのかもしれない。
- アーティスト: ナラ・レオン
- 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1998/11/26
- メディア: CD
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