hirogoal’s blog

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微妙な関係〜ワンダ・サー『ヴァガメンチ』

今晩はワンダ・サーの『ヴァガメンチ』を聴いている。ジョアンのライブが60〜70年代のブラジル音楽熱を復活させ、昔買ったCDを引っ張り出しては聴いているのである。(ちなみに『パジャマを着た神様』によると、こんなにもマニアックなアルバムをCD化した日本人っていう民族は何なんだ、ということらしいが)


ボサノバで気になりそうで気にならないのが、上手いと下手の中間をゆらゆら揺らぎながら、つぶやくように歌うボーカリストの存在である。元祖はジョアン、アストラッド(元)夫婦、ナラ・レオンあたりだろうか。名曲「ヂザフィナード」の初めの歌詞「君は僕が音痴というけれど・・・」からして確信犯的な感じ。しかしジョアンは超一級の絶対音感の持ち主だし、このワンダ・サーも気になって聴けないどころか、癖になるのだから不思議。


ワンダ・サーの歌声はジャケットのような夏のイメージではなく、ヨーロッパの秋を思い出させる。むしろナラ・レオンの『10年後』のようなジャケットが良かったのではないか。2曲目「そして陽は昇る」の後半や、10曲目の「無意味な風景」なんかはジャズ・ボサだし。


ジャズとボサノバの関係は非常に微妙だ。元々カリブ海を根っ子に持つ遠い親戚同士なのだからくっついても不思議ではない。しかしボサノバの美しき「微妙さ」を保ったままジャズに取り入れるのは難しい。文化を脱いで楽曲と「サンバ」だけを借りると、それはもうボサノバではなくなる。やはりポルトガル語がいい。
チェット・ベイカーとはちょい違うのだ。

ヴァガメンチ

ヴァガメンチ