今さら追悼の”マン・イン・ブラック”〜American IVを聴く
伝説のカントリーミュージシャンが70才となった2002年に制作したアルバム。
彼は低く渋い声で淡々と歌う。内蔵の奥底に響く声。モノクロの映像の中、白い息を出しながら、鋭い眼光で前を見つめて歌っている姿。ジョニー・キャッシュの名は以前から知っていたが、まさかこんなにも声で聴かせるアルバムを作る人だとは知らなかった。
今日買ったのは「AMERICAN IV」と題されたアルバム。付属のブックレットを開くと、中指に剣の紋章のような絵が描かれた指輪をはめた深いしわの手が映っている。
このアルバムに納められているのはこんな曲・・・「Bridge Over Troubled Water」「In My Life」「Desperado」といった60〜70年代のロックや「I'm So Lonesome I Could Cry」「Danny Boy」といってカントリースタンダード。それだけではない。Depeche ModeやNine Inch Nailsといった90年代の近代的なロックの曲もカバーしている。
しかし、かえってそんなことを書くことが意味のないことのように思える。彼が歌うとすべてが自分の曲。歌の個性が曲に与える影響をこんなにも感じるさせるのは他にあの人ぐらい。そうディランである。そうか、これならディランに影響を与えられるわけかと感心したりして。
2003年9月12日午前3時ナッシュヴィルのバプティスト病院で死去。享年71才。このアルバムは遺作となってしまった。もうすぐ日本でも彼の伝記映画『ウォーク・ザ・ライン』が公開される。