hirogoal’s blog

本と音楽とサッカーのことを書いています。

ロックンロールの未来を見た。その名は・・・

ブルース・スプリングスティーン。僕の高校時代のアイドルの1人だ。代々木のオリンピックプールでのライブは遠い場所から指をくわえて見ているだけで、行きたくても行けなかった。あれから20年経つのか・・・
久しぶりにブルースのアルバムを買った。最新作の”Devils&Dust"だ。まだ歌詞カードをじっくり読んでいないのだが、歌声には深みが加わり、とても穏やかな印象を受けた。そしてこのアコースティックな感じは新鮮だ。表面的な歌詞はどきついのにリラックスさの感じる音。"Born In The USA"のときの喧噪から遠く離れてブルースはこんな世界にやってきた。
Devils & Dust
確か”トンネル・オブ・ラブ”は買ってない。”Live/1975-85"を買ったのが最後かな。たぶんじっくり聴いたのも、それ以来。
僕がロックの歌詞カードをじっくり読み、その深みに触れたのはブルースの曲が初めての体験だった。そして高校生にはとっても難しい内容のデイヴ・マーシュが書いた伝記本やグリール・マーカスの本を読み、ロックの歴史、アメリカの社会とロックとの関係を学んだ。ただ好きなミュージシャンのルーツを探すのではなく、1950年代からの音楽を体系的に聴くということを知ったのもブルースのおかげだ。
けど、あのプロダクションの派手さに飽き飽きし、生ライブを聴くことができなかったのが当時の僕には致命的だったのか。その後一気にパンク・ニューウェーブの世界にハマっていき、再び戻ってくることはなかった。


今、スピーカーから流れている音は枯れ葉のように静かに部屋の中を埋めていく。もう彼はフィルスペクターのような音の洪水の中で叫ぶこともなく、暗闇の中で踊るわけでもなく、マシンガンのような早口で情景を歌い込むわけでもない。歌詞の内容はアメリカの見せたくないところを取り上げることがより多くなっているのだが、あの”音楽”のおかげですっと耳に入っていく。


コートを脱がすのは暖かい太陽だが、脱がした後に何が待っているのかは分からない音楽。人間性が高く、不器用な彼がこんな音楽を作り出した。20年ぶりの再会ではない。新しい音楽との出会いだった。