hirogoal’s blog

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田臥とカズ

プロバスケット選手の田臥勇太が注目されている。日本人で初めてNBAの選手になったからである。強豪のサンズの開幕ベンチ入りした彼は味方が大量リードしたあとに出場し7得点を奪った。日本ではマスコミが大騒ぎしその快挙を称えたが、彼は冷静だった。
試合後のインタビューで「持っている危機感は変わらない」と話しているのである。彼は出場し続けることの難しさをよくわかっていた。
それから五日後の今日、彼は故障者リスト入りした。別に体の調子が悪いわけではない。チームに新しい選手が入り、押し出される格好でリストに載せられたのである。


この記事を読み、単純にNBAはすごいと思った。サンズはジャパンマネーなんてアテにしていない。日本からの観光客がどれだけ来るかなんてまるで気にしていないのである。そして田臥はそのレベルの高さ、自分がどの位置で、この世界はどんな高さなのかを具体的にわかっているのではないかと思う。


どうしてこのようなことを考えたかというと、ジーコ岡田武史の対談の一節を読んだからである*1
両者とも日本人の優秀なサッカー選手がある一定のレベルになると海外へ行くことへの疑問点を示している。そしてジーコ三浦カズについて語った一節、ブラジルに少年のころ渡って認められた経験はその後のイタリアより価値があったと語っていること、これが田臥と重なってしまったのである。


とにかくレベルの高いところで自分を鍛え、活躍し、認められたい。けど、その参考例もないので自分でもがき、考えに考え、ヒントをつかみ、結果に結びつけなくてはならない。日本人がバスケットできるの?サッカーできるの?からスタートする困難さはパイオニアならではの貴重な経験である。


果たして彼はカズになれるのか。故障者リストに入ったこれからが注目である。

*1:2004年11月4日発売のサッカーマガジン1000号に掲載